スパークリングワインって、普通のワインを造ってそこに炭酸をビュー!と入れて完成でしょ?
そう思っている人いませんか?
私もそう思っていたのですが、実は違います。
スパークリングワインの製法は様々ですが、代表的なものが3種類あります。
- トラディショナル方式
- トランスファー方式
- シャルマ方式
どれも炭酸を後入れする方法ではありません!
これらの製造方法は不思議がいっぱいなんです。
今回は、スパークリングワインの代表的な3つの製法の不思議を一緒に見ていきましょう。
まず知っておきたい「泡が生まれる仕組み」
先ほど、炭酸は後入れではないという話をしました。
実際に、外から炭酸ガスを加えて造るタイプもあります。
しかし、今回紹介する3つの製法では、基本的に発酵によって泡を作ります。
発酵とは、酵母が糖を食べて、アルコールと二酸化炭素を生み出す働きのことです。
普通のワイン造りでは、発酵中に生まれた二酸化炭素は空気中へ逃げていきます。
一方、スパークリングワインでは、密閉された瓶やタンクの中でもう一度発酵を起こします。
すると二酸化炭素には逃げ場がないため、ワインの中に溶け込みます。

これが、スパークリングワインのシュワシュワした泡になるのです。
この「もう一度行う発酵」を、二次発酵といいます。
3つの製法は、何が違うの?
大きな違いは、二次発酵をどこで行うか、そして澱をどのように取り除くかです。
澱というのは、主に発酵を終えた酵母などが沈殿したものです。
出荷前に、この澱を取り除かねばなりません。
| 製法 | 二次発酵する場所 | 澱の取り除き方 |
|---|---|---|
| トラディショナル方式 | 1本ずつ瓶の中 | 瓶口に集めて、1本ずつ取り除く |
| トランスファー方式 | 1本ずつ瓶の中 | タンクへ移して、まとめて取り除く |
| シャルマ方式 | 加圧タンクの中 | タンクの中でまとめて取り除く |
それぞれの製法を、もう少し詳しく見てみましょう。
トラディショナル方式|瓶の中で泡を作り、瓶の中で仕上げる
トラディショナル方式は、シャンパーニュなどに使われることで知られる製法です。
シャンパーニュ方式とも呼ばれます。
まず、泡のないベースワインを造ります。
そこへ糖と酵母を加えて瓶に詰め、密閉します。
すると瓶の中で二次発酵が起こり、発生した二酸化炭素がワインに溶け込みます。
つまり、1本1本の瓶の中で泡を作っているのです。


ピヨメモ 「澱と熟成」
トラディショナル方式では、ワインを澱と一緒にしばらく熟成させることが多いです。
澱と一緒に熟成させることで、パンやブリオッシュのような香り、コクや複雑さが生まれます。
瓶に閉じ込められた澱はどうやって取り除く?
密閉された瓶で二次発酵を行った場合、どこから澱を取り除けばいいのでしょうか。
瓶を回して澱を集める
熟成中の瓶は、横向き。
澱も瓶の内側に広がった状態です。
そこで、瓶を少しずつ回転させながら、徐々に瓶口が下を向くように傾けていきます。
すると、瓶の中に広がっていた澱が、少しずつ瓶口へ移動します。

最終的には、瓶がほぼ逆さまになり、瓶口の近くに澱が集まった状態になります。

この作業をルミュアージュ、日本語では「動瓶」といいます。
集めた澱を凍らせて吹き飛ばす
瓶口に集めた澱は、瓶口部分を低温の液体に浸して凍らせます。
すると、澱を含んだ瓶口付近のワインが凍り、氷の栓のような状態になります。
その状態で瓶を開けると、瓶の中の炭酸パワーによって、凍った澱の塊が飛び出すんです!
この澱を取り除く作業をデゴルジュマン、または「澱抜き」といいます。

瓶を開けるので、少し炭酸やワインが減ってしまいます。
しかし、瓶口を凍らせ、すばやく作業することで、その損失をできるだけ少なくしています。
澱抜きのあとには、減った分のワインを補い、必要に応じて糖分を調整してから、コルクとワイヤーで栓をします。

ピヨメモ 「スパークリングワインの最終調整」
澱抜きのあと、失われたワインを補い、最終的な甘さや味わいを整えるために仕上げのリキュールを加えます。
この工程をドザージュといいます。
トランスファー方式|瓶内発酵後、タンクでまとめて仕上げる
トランスファー方式でも、二次発酵は瓶の中で行います。
違うのは、そのあとの澱の取り除き方です。
トラディショナル方式では、瓶を1本ずつ動かして澱を集め、1本ずつ澱抜きをしました。
一方、トランスファー方式では、二次発酵と熟成を終えた複数の瓶から、ワインを加圧タンクへ移します。

ポイントは、加圧された設備の中で作業することです。
圧力を保ち、ワインを低温にした状態でタンクへ移すことで、炭酸が逃げるのを抑えられます。
移したワインは、タンクの中でろ過してまとめて澱を取り除き、再び瓶詰めされます。
つまりトランスファー方式は、
- 瓶内二次発酵で、トラディショナル方式に近い味わいを再現
- 手間のかかるルミュアージュや澱抜きを省き、タンクの中でまとめて澱をろ過する
と考えると分かりやすいでしょう。
シャルマ方式|最初からタンクの中で泡を作る
シャルマ方式では、瓶ではなく、密閉できる大きな加圧タンクの中で二次発酵を行います。
泡を発酵によって作る仕組み自体は、ほかの2つと同じです。
違うのは、泡を瓶の中ではなく、大きなタンクの中でまとめて作ることです。

トラディショナル方式に比べて効率よく生産しやすく、ブドウのフレッシュさを生かしたスパークリングワインにも向いています。
イタリアのスパークリングワイン「プロセッコ」などでよく知られている製法です。
炭酸を後から入れるのはダメ?
実は、炭酸を後からビュー!と入れるワインもあるんです。
ただし、OIV(国際ブドウ・ワイン機構)では、
- 「Sparkling wine」=発酵によって生まれた二酸化炭素で発泡するワイン
- 「Carbonated wine」=外から二酸化炭素を加えたワイン
を別に定義しているんです。
また、二次発酵で泡を作るのは、発泡させるためだけではなく、ワインの香りや味わいを変化させることも目的の一つです。
単純にシュワシュワさせたかっただけではないということですね。
まとめ
製法がわかると、スパークリングワインが一層面白くなります。
どこで二次発酵させるのか。
澱とどのくらい一緒に熟成させるのか。
澱をどのように取り除くのか。
こうした細かい製造方法の違いが、香りや味わい、価格などにも関係しています。
次にスパークリングワインを飲むときは、ラベルや商品説明に書かれた製法にも注目してみてください。
「この泡は、瓶の中で生まれたのかな?」
「それとも、大きなタンクの中で作られたのかな?」
そんなふうに想像すると、いつもの一杯が少し違って感じられるかもしれません。